駄々っ子熊電
なんだか昨日から九州にいる感じがしない。
八幡浜からフェリーで別府に入るルートは、長年の間実行してみたいと思っていた。しかし実際やってみるとなんだか感動が薄かった。
やはり鉄道マニアには、鉄路で関門トンネルをくぐらないと九州に入ったという感慨が沸かないのだろう。
朝起きてみると、なんだか体がだるい。そして喉も痛い。おまけに腹の調子も悪い。朝ラッシュ時のみ走る元西鉄の連接車を見たかったが、そんな元気は無く、ホテルの一階にあるレストランで、朝食をとりながら市電の走る姿をぼんやり見ていた。
とりあえずチェックアウトし、昨日駅の観光案内所で買った一日市電乗車券で市電に乗ってみる。ちょうどレトロ調の101号がやって来た。浅く座ったら、いきなりシートが起き上がって前にのめって焦った。
熊本駅前でほどんとの乗客が降りてしまった。終点の田崎橋とはどこぞやと思っていると、二つ先の停留所であった。
向かって右手には鹿児島本線が見えるが、なにも無い所だ。その向こうでは新幹線の工事をしている。あと開通まで二年ほど掛かるそうな。
折り返して今度は一気に健軍町まで乗り通す。途中横目で見た熊本城の桜は葉桜になり掛けていた。
市電の終点というと、大概寂しい感じがするもんだ。この健軍町も繁華街から市電で30分近くかかるから、そういう所を想像していた。
しかし予想に反して賑やかな街だ。熊本という街はなかなか面白い所だと思った。
ここから半日分ほど、画像はナシ。
帰路にこの辺を撮影した、メモリーカードを落としてしまったのだ。
帰りは上熊本行きに乗り込み、一通り熊本の市電を乗り通したが、なんだかつまらない。三系統もあって、距離も長く乗りごたえはあるが、車両も停留所もよく整備され過ぎて、ローカル色を余り感じない。
しかしこの上熊本で接続している熊本電鉄は、そんな思いを満たしてくれる、なかなかローカルな鉄道会社だ。
そもそも熊本に来た目的は、この鉄道会社が近々廃業すると聞いたからだ。熊本電鉄は熊本市に対し、市電との直通化、車両のLRT化、それに伴う改軌を要求、受け入れなければ廃止も辞さないという方針を打ち出した。
しかし傍から見ると、市にカネのかかる(三桁億だとか)物をねだっておいて、
「聞いてくれなきゃ、鉄道やめちゃうよ!」
「ほんとだよ!」
「いついつまでに聞いてくれなきゃ、やめちゃうよ!」
(そのいついつまでが来て)
「ねぇ、きいてるの」
「もう、やめるよ、ホントだよ」
「だから、アレかってよ〜」
「ホントにやめるよ、ホントだよ〜」
といいつつ鉄道を現在も走らせる、まるで聞き分けの無い子供の様な・・・ホントはもっと真面目なハナシなんだろうが、そう熊電の事を勝手に解釈して、そしてここまで来た。
ここの上熊本と北熊本の区間列車に使われる元東急の雨ガエルは、両運化されて反対側が扁平ガエルになっているものの、原型を非常に保っている。というか、雨ガエルを運行しているのは、今や熊本電鉄だけとなってしまった。
東急時代と同じ緑色の車体には沢山ヒビが入っている。また車内の広告は東急時代のものが残され、つり革には東急百貨店の広告が入ったままで、思わず脳内でタイムスリップしてしまいそうだ。そのつり革で高校生が器械体操もどきをやり始めたら、運ちゃんが怒り始めた。どうやら貴重なものらしい。
運転台の後ろには、「この車両にはどうやっても冷房がつけられません、ホントすんません、ガマンしてください(意訳)」と張り紙がしてある。熊本の夏はもの凄く暑いらしいから、謝らずにはいられないのだろう。
上熊本から北熊本への区間は、短いながらも色々な見所があったが、あっという間。終点北熊本に着く前に、運転士は運賃箱にカバーを掛けてしまった。ワンマン運転なので、乗り継ぎの際に運賃の支払いはどうするのか?、と勝手に悩み運賃を払わず列車を降りた。
他の乗客についていくと、隣のホームに御代志行きの電車がやって来た。こちらは元都営地下鉄の大型車両である。
藤崎宮前行きと交換後、列車は走り出した。流石に20メートル級の大型車両二両だけあって、車内は余裕たっぷり。この余裕により日中のマイ自転車持ち込み可という、破格なサービスが実施できるのだ。
途中三ッ石駅では運転手が室内灯を点灯させる。一両目の先だけ高架にホームがかかっており、真っ暗になってしまうのだ。出発後どうするのかと見ていたら、ご丁寧にまた室内灯を消した。その様子に岐阜の未来工業という会社を思い出した。
その次の黒石駅では反対側列車と交換。終点まで一閉塞だと思っていたのに意外。
終点御代志。行き先には廃線区間を遮る様に車止めがあるが、その横はコンビニ。旅情もへったぐれもない所だ。
先ほど迷った運賃の支払い方はすぐに分かった。整理番号は通しになっており、上熊本からの整理券を持っていれば、ここでまとめて払えばいいのだ。上熊本〜御代志間360円、藤崎宮前〜御代志間320円、地方のローカル私鉄としては良心的な運賃だと思う。地元のミューなんとかという、一応大手私鉄を名乗る鉄道会社も見習って欲しいトコである。
ホームは島式ホームの片面使用で、もう一方はバス停になっていて乗換えが出来る様になっている。が、バリアフリー性は皆無なので、バスに乗る為には結局一旦ホームから地面に降りなければならないという、意味の無いつくり。
発車まで元東京都交通局の6000系を見回してみるが、無骨だと思っていた顔付きも、屋根上のベンチレーターから先頭部にかけてのラインを見てみると、横顔はなかなかクールだと思った。
帰りはそのまま藤崎宮前まで行く事にする。
御代志から二つ目にあるのは、熊本電鉄では一番新しい電波高専前駅。校内ではまだ桜が綺麗に咲いていた。
しかし高専生は免許を取得すると、車やバイクで通学し始めるんではなかろうか。この高専の中にもかなり広い駐車場があり、乗ってきた高専生は女の子二人だけであった。
黒髪町を過ぎると、ようやく待望のポイントである。
踏切を目の前にし、スピードを落とす電車。目の前を見ると、道路が寄り添って来る。その道路には大勢の高校生が歩いている。併用軌道なのでガードレールなど仕切りはなく、その横をゆっくりと進んでいく。
終点藤崎宮前は立派な駅ビルである。駅ビルというかパチンコ屋の軒先を借りているという感じである。
先ほどの併用軌道区間へ歩いて戻ってみる。思ったより遠く1キロ弱ほど、それも真っ直ぐな道がないから、細い裏路地の角を何度も曲がりながら進む。
高校生がやたらと多いのは、高校が沿線にあるというか敷地を跨いでいるからであった。それも今日は入学式、親子連れの新入生もいた。
こんな所でカメラを振り回したら、警察のご厄介になってしまいそうな昨今の情勢もあるので、しばらく大人しくしていた。それに風邪をこじらせ、気分がすぐれなかった。
しかしあの大きな20メートル級の電車が、こんな狭っくるしい所を走るのは圧巻。元東京都営の6000系は無骨だから余計にだ。
たまに軌道の上に車を止める人がいる。何をするかと思えば、軌道横の酒屋でジュースを買ったり、手紙を出したりするのだ。電車が来たら、ぶつかりやしないかとヒヤヒヤする。
線路は綺麗なS字カーブを描いて、民家の軒先をなぞる様に走っている。それはレールと車輪の摩擦も大きいという事で、凄くけたたましい金属音を発てる。朝6時から20時ぐらいまで、毎時4〜8本通り過ぎる訳だから、沿線住民としたらとんでもないことだろう。
よく見ると、沿線にある民家の壁には「LRT化反対!」と揃って掲げてある。何故反対なのだろうか?、良く分からない。
こういう時に反対運動を起こすのは沿線住民でなく、恩恵の受けられない他所の地域住民で、余計な事に税金を使うなとケチをつけるのが一般的である。
反対の理由を考えてみるが、LRT化されれば本数が増えてやかましくなるから?。今の大型車両からLRTになれば、本数は増えてもかなり静かになるはずである。
恩恵を受けられる沿線住民が反対とは、何か深くて黒い問題があるのではないかと勘ぐってしまう。そもそもLRT化は沿線住民の願いというよりも、熊本電鉄という一企業の願いで動いている訳で、その辺のチグハグさもあるのではないかと思ってしまった。
17時を過ぎると高校生の姿も見なくなった。電車の数も一時間二本から四本になるので都合もいい。日没までのあと約1時間が勝負だ。
高校の門前でカメラを取り出すと、目の前に二人組みの男たちがやって来た。カメラを持っているから同業者か?
なんと外人の鉄道マニアであった。「Hello」と声を掛けてきたので、こちらも「こんにちわ」と声を掛けた。ここは日本であるから、これでいいのだ。
ここにはもう一つ見所があって、昔ながらの電鈴式踏切があるのだ。カラン、カランと鳴り出すが、次第にタイミングがずれるリズム音痴なヤツ。十年程前までには、名鉄豊川線沿線にもよく設置されていた。そこで生まれ育った身としては、懐かしい音だった。
暗くなったので、藤崎宮前駅に戻る。一日乗車券があるので、約600m先にある市電の水道町まで歩けば大概の場所へ行ける。
しかしまた無骨な6000系に乗り込み、北熊本を目指した。そこからまた雨ガエルに乗り継ぎ上熊本へと戻った。運賃は220円だった。
JRの上熊本駅も熊本駅と同じ様に、二年後の新幹線開業の為に工事中であった。
ベンチでのどアメをなめていると、目の前にネコが現れた。ノラのくせに行儀良くおすそ分けを待っている。アメが欲しいか、でも食えないよね、と暫くネコをからかっていると、アメの入った袋をベンチ下に落としてしまった。するとネコはアメに飛びついてきたが、こっちも必死で回収を始める。
暫くベンチ下にいたネコも何処かへ行ってしまった。よく見ると向こうのベンチで、スナック菓子を食べている人の前で同じ様におすそ分けを待っている。ゲンキンなヤツだなと思いながら、熊本行の電車を待っていた。
2007.04.09 | Comments(0) | Trackback(0) | 鉄道旅

